ギターの基礎知識
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ピックアップ編
1.P.U調整(音量バランス)
P.U(ピックアップ)はコイルとマグネットで出来ています。
マグネットは磁力があり、あまり弦に近付くと弦振動を悪くします。
1本の弦の下に3個もP.UがあるST(ストラトキャスター)は、そのために調整が大変です。
ストラトキャスター ピックアップ

図9のようにF<M<Rと高さがセットされます。(同種類のP.Uで同出力の場合)
近年では、フロント用、ミドル用、リア用と専用P.Uが出てきて、磁力とコイルの巻き数で音量と音質を作っているものもあるので、なおさら調整が難しくなってきています。
しかし、どのようなタイプでも基本は同じです。
まず調整の最初はFPU(フロントピックアップ)のセッティングからです。
3個のP.U(F.M.R)をピックガードの面まで下げて、磁力の影響が弦に受けないくらい(弦から約5mm程度離す)にしたのち、FPUだけアンプから音を出しながら3弦または6弦の12Fを弾き、弦振動を音と目とチューニングメーターで確認しながら徐々にP.Uを上げていきます。
音量がどんどん上がり、あるところで弦振動が乱れ、音に濁りが出てサスティーンが悪くなっていきます。
このポイントから少しずつP.Uを下げていき、弦振動がきれいで音がボケないところを見つけます。
といっても、ここはプロとして一番のキメのポイントです。
「好みの音になっていて音程とサスティーンが良い」 これには熟練が必要ですがトライしてみるのもいいでしょう。
より分かりやすくするには、ディストーションを使ってみるのもひとつで、音の「うなり」が聞き取りやすくなります。

次にこのFPUと同じ音量にセレクターSWを使ってMPU(ミドルピックアップ)、RPU(リアピックアップ)を合わせ、もう一度弦振動にブレがないかを確かめます。
もしFPUだけの時より少しブレが増えるようであれば、各P.Uの上下ネジを1回転ずつ下げてP.Uを弦から遠ざけていき(全体を同じ関係で下げていく)、まだブレるようであれば、あと1回転(もしくは半回転)下げたり、と試してみて下さい。

次はP.Uの1弦から6弦までのバランスの取り方です。
フェンダーのP.Uは図10のように各マグネットが「均等な高さを持つもの」と「バラバラの高さを持つもの」の2種類あります。
フェンダー ピックアップ
前者は1弦と6弦の音量に合わせて、2から5弦は成り行きとなります。
私たちプロは、これに弦のRを変化させバランスを取りますが、ここではここまでとします。

後者の「バラバラの高さのもの」が一番のクセ者です。
1954年以降、オールドと呼ばれるSTのP.Uがこれで、当時は3弦が巻き弦だった為に芯線が他の巻き弦よりも一番細く、出力が小さい事からマグネットを弦に近づけることで出力をカバーしていました。
近年のギターでは3弦に裸弦を使う為、オールドタイプのP.Uでは出力が出過ぎ、各弦のバランスがくずれがちになります。
また2弦ポールピースが一番下がっているのは、当時裸弦は1弦と2弦だけで、その2弦が1弦よりも当然太く、パワーがあった為に弦からマグネットを遠ざけた訳です。
したがって、3弦の音量に1弦と6弦を合わせ(3弦中心に)シーソーのような調整を行います。

前者後者共、指板のRにもかなり左右されることと、使用するアンプが「高温重視のアンプ」か「低音重視のアンプ」かによってバランス調整の違いが出ますので、この辺の領域は私たちプロに任せてもらった方が良いでしょう。

このSTの調整が出来れば、HBタイプのLPやフルアコなどは簡単にできます。
しかもポールピースが上下可変出来るので、各弦の音量バランスも可能ですし、P.Uを弦に近づけてもSTほど弦振動に悪影響を与えませんので、音色重視の調整ができます。

一般的によくあることですが、STとLPの両方をお持ちの方は「ひとつのアンプ」でギターを持ち替えたりするとSTの方が出力が小さく、P.Uを弦に近づけて出力を補おうとする訳ですが、この方法が最悪を招くわけです。

「パワーはエフェクターやプリアンプでかせぎ、音源たるギター側ではあくまでもクリアーで正しい弦振動を作るべし」と言うことなのです。

マグネットの磁力で乱された弦振動はシールドコードから出た後には正しい弦振動に戻せません。
蛇足ですが、太い弦側でどこを弾いても「ビリつく」事の原因のひとつにP.Uのマグネットによる弦への接近があります。
ベースのP.U調整も基本的な考え方は同じなのですが、使用するP.Uの種類によっては調整するポイントが変わります。
図11のように、PB(プレシジョン・ベース)のP.Uは指板のRに沿った調整が可能で、構造的に調整しやすいと言えます。
しかしJB(ジャズ・ベース)のP.Uの場合、構造上2弦、3弦への距離を考慮した調整が必要となり、弦振動と音量バランスを弦高調整で決定していく必要があるのです。
このタイプのP.U調整は、P.Uの高さと弦高調整を同時に行うこととなりますので、私たちプロに任せてもらった方が良いでしょう。
ベース用ピックアップ

2.ベースのピックアップバランス
先に言っておきますが、ベースは難しい!!
なぜか?
1,使うアンプによって大きく違ってくる。
2,使う弦によって大きく違ってくる。
3,奏法によって大きく違う。
4,この3つ、おのおのに大きな幅があること。
たとえば、フェンダーアンプなのか?アンペッグなのか?マーシャルなのか?ラインなのか?スピーカーの口径がいくつか?
フラット弦なのか?ラウンド弦なのか?コーティング弦なのか?指弾きなのか?チョッパーなのか?ピック弾きなのか?
フレットレスなのか?LOW-Dで使うのか?・・・等。
実はギターよりもはるかに難しいのがベースであり、シチュエーションを聞いて私達が調整するのがベストではあるのですが、できれば自分で調整可能になるのがより良いと思います。
いろんな場所で、いろんなアンプを使って演奏することもあるでしょうから、その場で自分に合った調整が出来れば一番でしょう。
ここでは様々なヒントを差し上げそのヒントから自分に合った調整を考えて下さい。

ベース弦写真
ギターのP.Uの説明のところで芯線の太さによってパワーが変わる事を言いましたが、ベース弦の場合はもっと複雑になります。
図12には1〜4弦までを裸(ほどいた)にしたものです。
1弦は芯線プラス巻弦
2弦は芯線プラス巻弦プラス巻弦
3弦は芯線プラス巻弦プラス巻弦
4弦は芯線プラス巻弦プラス巻弦プラス巻弦
と大体なっています。
芯線の太さを何ミリにし、巻弦を何ミリというアレンジは各メーカーによって異なります。
ここがオリジナルサウンドの要になってきます。
芯線を異形芯線という六角形(または多面形)の断面のものを使ったり・・・、巻弦の一層目をステンレス(少しパワーがある)に、二層目をニッケル(少しパワーがない)にすること等。
これによって当然パワーと音色が違ってくる訳で、音量と音色の良い弦があったり、悪い弦があったりする訳です。
一般的には二弦が一番細い芯線を使うのでパワーが落ちがちです。ピックアップ側で音量を補正してあげないといけない場合もあります。

磁界と弦振動
ポールピースと弦の位置
フェンダーのPBやJBは、なぜ1本の弦の下に2個のポールピースを配置しているのでしょうか?
実はPBのオリジナルモデルはSTやTEと同じ1本の弦の下に1個のポールピースだけだったのです。これには問題がありました。
P.Uがプロント寄り(ネック側寄り)にセットされていたこともあり、弦振動が磁界をオーバーし、出力が得られなかったのです。
図13 図14
しかもマグネット真上にある弦が初動時にマグネットから離れることになり、立ち上がりも悪くなりました。
この全てを改善すべく、弦の真下に2個のポールピースがある現状のPBとJBのピックアップになり、ノイズもキャンセルできるようになったのです。
図14で分かるように2個のポールピースと弦の関係は本来すごくシビアなものです。
弦が静止状態で、図15のような位置関係(図15左)はあまり良くなく、弦はできるだけ両ポールピースと等距離(図15右)にあるべきなのです。
以上を予備知識として、ベースのピックアップバランスに入ります。

ベースのピックアップの種類
ベースのピックアップの種類

図16
1,PB、JB等の(シングルコイル×2=ハムキャンセル)フェンダータイプ
2,形はPB、JBで構造上少し違うタイプ(ディマジオ等)
3,バーマグネットを使ったタイプ(バルトリーニ等)
4、バーマグネット プラス プリアンプを使ったタイプ(EMG等)


1、バランス調整には必ず自分のベースアンプを使うこと。(少し音量を出して調整した方が良い)
2、新しい弦で調整されていること。
3、アバウトに決めたピックアップ髙を決めた後4へ
4、 A 磁力が弦を引っ張らない
4、 B 音にうねりがない
4、 C 各弦のバランスを考える
4、 D ローポジションで弾いた時と、ハイポジションで弾いた時とで、その音量に差が出来るだけ少ない高さにする
以上はギターのピックアップバランス編を基本にした調整ですが、ディマジオ社では六角レンチでポールピースの高さを変えられるモデル図16-2が、ギター、ベース含めて数種類あります。
調整してみてどうしてもバランスがとれない場合は、この様なP.Uを使ったり、弦のメーカーを変えてみたりする事もひとつの方法だと思います。
5弦ベースや6弦ベースでLOW-Bに立ち上がりと音量に不満がある場合、この弦だけ別のメーカーの物を使うプロミュージシャンもいますし、同じメーカーでゲージだけ変えたりもします。
エフェクターを使うエレキギターに比べて、ベースの場合は生音が命なので、このあたりには一番神経を使わなければいけません。
また、好きな音楽をステレオでかけながら一緒に演奏してみて、自分のベース音が沈まないかチェックしていくのもひとつの方法ですし、何弦だけ前に出ない場合等、みつかってくる場合もあり、擬似的に自分のベースの存在感を確かめられます。

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